目次
ファスナー(チャック)の構造と仕組み
ファスナーの構造と仕組みを知っておくと、自分で修理する際にも役立ちます。ファスナーとは、衣類やバッグなどに用いる留め具で、チャックやジッパーと呼ばれることもあります。ここではファスナーを構成する部品の名称や役割、ファスナーの仕組みについて紹介します。
スライダー
ファスナーを開けたり閉めたりする際に、持ち手となる部分です。「滑動部(かつどうぶ)」を意味するパーツで、ファスナーのレール部分となるエレメントを噛み合わせる役割を持ちます。スライダーは「柱」「胴体」「引手」という3つで構成されていて、ファスナーの開け閉めをするときに掴むのが「引手」、引手を取り付けているのが「柱」、エレメントと面しているのが「胴体」です。
エレメント
ファスナーの両サイドにある凸凹した歯がついているパーツで、「務歯(むし)」とも呼ばれています。スライダーを上下に動かすことで、エレメントの歯を噛み合わせたり分断させたりしてファスナーの開け閉めを行います。エレメントはファスナー専用のテープ生地に縫い付けられています。
テープ
エレメントと生地をつなぐ部分です。ファスナーの命とも言えるエレメントが曲がったり外れたりしないよう、テープは頑丈な生地を使用しているのが一般的です。定番の素材としては、ポリエステルなどの合成繊維や綿などが挙げられます。スライダーやエレメントと色味を統一しているアイテムも多いですが、あえて異なるカラーを取り入れることで、ファッションのアクセントにしている場合もあります。
箱と蝶棒
「箱」とはファスナーの1番下にある四角いかたちをした部品、「蝶棒(ちょうぼう)」は箱と対になっている部品を指し、ファスナーの始点となる部分でもあります。 箱と蝶棒はズボンやポーチなどにはなく、パーカーやコートなど、左右に分離することができる「開製品(オープンタイプ)」に付いています。
エレメント下部の左右の一方に「箱」、もう一方に「蝶棒」と呼ばれる細長い形をした部品があり、蝶棒を箱に差し込んでスライダーを上げるとファスナーが閉まる仕組みです。
ファスナーの種類と修理のしやすさ
ファスナーと一口にいっても、使用されている素材にはいくつかの種類があります。ファスナーに使用されている素材によっては、自力で修理がしにくいものもあるため、覚えておくと便利です。ここからは、ファスナーの種類、素材の特徴、修理のしやすさについて解説します。
金属製のファスナー
エレメントやスライダーが金属でできている、もっとも古くからあるタイプです。丹銅・洋白・アルミなど、さまざまな金属が使用されており、重厚感のある見た目に仕上がります。
金属製のため耐久性が高く、デニムや革などの厚手の生地とも相性が良いのが特徴です。
丈夫な反面、金属が錆びてスライダーを動かしづらくなる点がデメリットですが、万が一故障した場合でも、金属は変形・加工がしやすいので、比較的簡単に修理ができます。
プラスチック製のファスナー
エレメントやスライダーがプラスチックでできている軽量タイプです。加工がしやすいプラスチック製はカラーバリエーションが豊富で、ポーチなどのデザイン性を重視したアイテムに使用されています。
一方で、熱に弱く、強い力を加えると変形したり折れたりしてしまうため、洋服にはほとんど使われていません。耐久性も低く、壊れやすい点もデメリットです。修理の際も強い力を加えると状態が悪化する可能性があるため、扱いは少々難しくなっています。
樹脂製のファスナー
エレメントやスライダーにポリエステルやナイロンなどの合成樹脂が使用されているタイプです。エレメントがコイルのように螺旋状になっていることから、「コイルファスナー」とも呼ばれます。
金属製のファスナーやビスロンファスナーに比べると、柔軟性が高いため、柔らかく動きの出やすい生地にもマッチします。洋服よりもバッグやポーチに採用されることが多いファスナーです。コイルファスナーは金属ファスナーに比べると耐久性は劣りますが、プラスチック製のファスナーよりは簡単に修理ができます。
ビスロンファスナー
エレメントやスライダーがポリアセタールなどの樹脂からできているタイプです。コイルファスナーと同じ樹脂製ですが、金属製のファスナーと同等レベルの耐久性、樹脂ならではの軽量化を両立しています。
樹脂を使用しているため加工がしやすく、カラーバリエーションも豊富です。コートやパーカーなどの衣類に使用されることが多く、故障した場合の修理もしやすくなっています。
【原因別】ファスナーを自分で直す方法
「スライダーが動かない」「ファスナーを締めてもエレメントが噛み合わない」など、ファスナーが壊れるのには、さまざまな原因があります。ファスナーが壊れた場合は、自分で修理できるケースとそうでないケースがあります。ここでは、自分で修理できるケースをピックアップして、原因別の直し方を紹介します。
ファスナーが生地を噛んだ
初期段階でもっとも多い故障が、スライダーを上下させる際に洋服やバッグなどの生地も一緒に巻き込んでしまい、スライダーが動かなくなるケースです。無理にスライダーを動かすと、生地を傷めたり、スライダーを破損したりするため注意が必要です。
ファスナーが生地を噛んでしまったときは、噛んでしまった方向と逆にスライダーを引っ張りつつ、挟まった生地をゆっくりと引き出しましょう。デニムなどの硬い生地の場合は、スライダーやエレメントをドライヤーで軽く温めると、柔らかくなって生地を取り出しやすくなります。
巻き込みがなかなか解消しなければ、マイナスドライバーやアメピンなど、薄くて平べったいものをスライダーと生地の間に挟むのも効果的です。耐久性の低いプラスチック製のファスナーは、強い力を与えると変形しやすいため慎重に作業を進めていきましょう。
スライダーが片方だけ外れた
スライダーが左右のエレメントどちらも噛み合わさっているジーパンやバッグなどは、スライダーが片方だけ外れてしまうことがあります。スライダーが片方だけ外れてしまったら、まずは手作業でスライダーの隙間にエレメントが入るか試してみましょう。
エレメントを手で曲げて、エレメントの突起を1つだけスライダーの隙間に押し込むと、簡単にはめられます。手作業でスライダーがうまく押し込めない場合は、次の手順で直していきます。
- マイナスドライバーとペンチを用意する
- スライダーの隙間部分をマイナスドライバーで少しずつ広げる
- 隙間に外れたエレメントを入れる
- エレメントを挟んだまま、ペンチでスライダーを挟む
- 少しずつ隙間を狭める
幅を狭めすぎるとスライダーが動かなくなるため、様子を見ながら少しずつ調整していくのがポイントです。
スライダー自体が取れた
スライダー自体が完全にエレメントから分離してしまうケースもあります。スライダー自体が取れた場合も、スライダーが片方だけ外れたときと同様に、マイナスドライバーとペンチで修理ができます。
- マイナスドライバーとペンチを用意する
- スライダーの隙間を左右どちらもマイナスドライバーで少しずつ広げる
- エレメントを挟んだまま、ペンチでスライダーを挟む
- 少しずつ隙間を狭める
最終的に左右どちらも隙間を狭めていきますが、片方ずつ調整していくとスムーズに修理ができます。
エレメントが噛み合わない
エレメントが曲がっていたり、エレメントの突起が一部取れていたりすると、うまく噛み合わず、スライダーが動きません。エレメントが曲がっている場合は、ペンチで曲がったエレメントをまっすぐに正すことで対処できます。
ただし、プラスチック製などファスナーの材質によっては、部品が破損してしまうケースがあるので注意が必要です。金属製などの丈夫で変形しやすい材質で試してから、プラスチック製のファスナーで実際の修理を行うと力加減が掴みやすくなるでしょう。
また、エレメントの突起が取れている場合は、ファスナー自体が使用できないため、交換するしかありません。
ファスナーが閉まらない(閉めても開いてしまう)
「スライダーを動かしてファスナーを閉めているにも関わらず、閉めたはずの部分が開いてしまう」「閉めたはずのファスナーがいつのまにか開いている」といった場合は、うまくエレメントを挟めていない可能性があります。ファスナーがX字状に開いてしまうときは、次の手順で直していきます。
- ペンチを用意する
- スライダーをペンチで挟み、隙間を狭める
- ペンチで曲がったエレメントをまっすぐに正す
閉めても開いてしまう原因としては、「スライダーの緩み」「エレメントの曲がり」などが考えられます。異常がある箇所を特定したうえで、スライダーやエレメントを破損しないよう、少しずつ調整していきましょう。
エレメントがずれる
エレメントは左右対称に作られており、本来はぴったり連結する構造になっています。しかし、エレメントにズレが生じると、ファスナーを最後まで閉めたときに、エレメントが片方だけ不自然に余ります。
エレメントがずれる原因としては、エレメントを挟んでいるスライダーの隙間が片方だけ開いて緩くなっているか、もしくはキツくなっている可能性が高いです。エレメントがずれているときは、次の手順で直していきます。
- マイナスドライバーとペンチを用意する
- スライダーの隙間が片方だけ広がっていないか、もしくは閉じていないか確認する
- 生地が余っている側を引っ張り、エレメントの位置を左右対称に揃える
- 両方のエレメントの位置を左右対称に揃える
- 隙間が開いている場合は、ペンチで隙間を狭める
- 隙間が閉じている場合は、マイナスドライバーで隙間を広げる
- ファスナーを開閉して、エレメントにズレが生じないか確認する
上記の「隙間の調整」「ファスナーの開閉」を繰り返すことで、エレメントのズレが解消されます。
スライダーの持ち手が壊れた
スライダーの引手・取っ手が外れるなど、スライダー自体が壊れた場合は、新しいスライダーと交換しなければいけません。スライダーは手芸用品店やネット通販で入手可能です。サイズや大きさが違うとフィットしないため、壊れたスライダーを店頭へ持っていき、見比べるのがおすすめです。
- マイナスドライバーとペンチを用意する
- マイナスドライバーを使って、エレメントが入っている隙間を広げる
- 古いスライダーを取り外す
- 新しいスライダーの隙間部分にエレメントを入れる
- エレメントが挟めたらペンチで少しずつ隙間を狭めていく
新しいスライダーが、うまく入らない場合はマイナスドライバーで隙間を広げると、エレメントを挟みやすくなります。広げた隙間にエレメントが入ったら、ペンチで丁寧に狭めていきましょう。
ファスナーの滑りが悪い・固い
金属製のファスナーは、劣化すると錆が発生して滑りが悪くなることがあります。スライダーやエレメントに問題がないのにファスナーの滑りが悪い・固い場合は、次の手順で直していきます。
- 潤滑油(リップクリーム、ろうそく、ミシン油など)を用意する
- 潤滑油を綿棒に浸して、少しずつエレメント部分に塗る
塗る量が多いと、エレメントだけでなく生地に油分が染み込んでシミになる可能性があるため、少しずつ行うのがおすすめです。また、色付きのリップクリームは生地にシミがつきやすいので、無色無香料タイプを選びましょう。丁寧にお手入れしたいアイテムは、ホームセンターなどで購入できる「潤滑スプレー」を使うと、きれいに仕上がります。
こんな場合はファスナーの取り替えが必要!
ファスナーが壊れた原因によっては、直すことができない可能性もあります。もともと装着されているファスナーを修理できない場合は、新しいファスナーに交換するしかありません。ここからは、自力で修理できない2つのケースを紹介します。
テープが破れた
ファスナーを強く引っ張ったりテープ部分が劣化していたりすると、エレメントが衣類から分断されてしまうことがあります。テープの損傷が激しい場合や、エレメント部分に布が残っていない場合には、古いファスナーを取り外して、新しいファスナーをつけるしかありません。
テープの損傷がほとんどなく、エレメントの下に布が付着している場合は、破れたテープとエレメントに残っている布を縫い付けることで修理できる場合もあります。縫い付けて修理をするときは、エレメントに糸がかからないように注意しましょう。
エレメントが変形・欠けた
ファスナーの経年劣化により、エレメントの突起部分が一部欠けてしまうことがあります。また、当て布をせずにファスナー部分に高温のアイロンをかけてしまうと、エレメントが熱によって変形してしまうケースもあります。
エレメントが曲がっていたりずれていたりするだけであれば、ペンチなどで元に戻せますが、溶けて変形してしまったもの、欠けてしまったものは修理ができません。エレメントが一部でも変形・欠けたファスナーは、まるごと新しいものに交換することになります。
ファスナーの付け替え方法
元々ついていたファスナーが直せない場合は、手芸用品店やネット通販などで、新しいファスナーを購入して、付け替える作業が必要です。ファスナーを購入する際には、テープ・エレメント・スライダーがセットになっているものを揃えましょう。ここでは、ファスナーを縫って取り替える方法を解説します。
ファスナーの位置を確認
取り外したあとの装着がスムーズにできるように、ファスナーの位置を事前に確認しておきましょう。もともと付いていたファスナーの確認が不十分だと、正しい位置や縫い目がわからなくなり、仕上がりにも影響を及ぼします。
また、衣類やバッグの生地が柔らかい場合は、テープを補強するために裏地がついていることがあります。テープの縫い目をほどく際は、裏地が破れてしまわないよう注意しましょう。
仮止め
ファスナーを縫い付ける方法には、「ミシン」と「手縫い」の2つがあります。ファスナーは構造上、エレメントを左右対称に仕上げる必要があるため、少々難易度が高い作業となります。
ファスナーの取り付けに慣れていない方は、エレメントがずれてしまわないように、テープ部分をまち針や仕付け糸で仮止めしてください。ミシンを使用する場合は、水溶性の両面接着テープで仮止めするのがおすすめです。
縫う
仮止めが完了したら、テープと生地を縫い合わせていきます。元々ファスナーがついていた縫い目に沿って、ミシンもしくは手縫いで取り付けます。ミシンを使う場合は、布を押さえる部分が片側のみの「ファスナー押さえ」があると便利です。
裁縫が苦手な方は、「手芸用ボンド」で貼り付ける方法もあります。手芸用ボンドは手芸用品店やネット通販などで手に入れることができ、バッグを作れるほど強度の高い商品も販売されています。
【まとめ】洋服のファスナーは簡単に修理できる!
ファスナーが壊れてしまうと、「もう使えないから」と捨ててしまいがちですが、実は家庭にあるマイナスドライバーやペンチで簡単に直すことができます。また、修理のポイントや注意点を知っておくことで、ファスナーや布地にかかる負担を軽減させることも可能です。今回ご紹介した直し方を参考に、お気に入りのアイテムのファスナーが壊れてしまったときは、ぜひご自身で修理してみてくださいね。
おすすめのオリジナルアイテム
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新品購入を検討される方はこちらもチェックしてみてください。
保冷袋のファスナーが壊れたので調べていたら、こちらに辿り着きました。
原因別の直し方をその通りにやってみると、あっさり直りました。
ありがとうございました。
コメントありがとうございます。お役に立てたようで光栄です。
大変お世話になります。
「スライダーが片方だけ外れた」のアドバイス通りにトライしたところ、
思っていたよりも早く、上手く直りました。
と同時にファスナーの構造を理解でき、修理にとても役立ちました。
どうもありがとうございました。お礼のご連絡まで。
お役に立てたようで大変光栄です。今後も役立つ内容を発信していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。